コラム:イリエナオコ
前回記事の続き。
今、「ゆるい職場」で若手は自身の成長に不安感を持っているというお話でした。
しかし、だからといって職場環境改善は止めるわけにはいきません。「いい会社」は選社基準になっている上、心理的安全性はワークエンゲージメントと大きく関わっています。ハーズバーグの2要因論が思い出されますね。

「よい環境を維持しつつ、成長機会を創出していく」
そこで従来の指導では限界があるため見直されているのが「横のつながり」。
1.若手のみ、もしくは大多数が若手のチームをつくる
2.数字で結果が短期的に判断できる業務
つまり上司・先輩からワンウェイによる“教える”スタイルではない方法で若手育成をしようという試み。いくつかの企業でも事例がすでに出ているそうです。
上司や先輩はあくまでも管理統括やアドバイザーであり、チームプロジェクト主導者はあくまで若手。物怖じせずプロジェクトで自分を活かすために行動できるほかにも、内容も自由なばかりではなく「責任」を持たせることで学生のグループワークと差別化し《仕事》としての意義を創出しています。
旭化成の人事戦略「CLAP」
ご存知旭化成。サランラップやヘーベルハウスなどといったブランドで業界を牽引、誰もが知る老舗企業ですね。いつの時代も新しい視点で消費者にアプローチしてこられています。
“人は財産、すべては「人」から”の考えのもと、2022年12月より導入しているのが「CLAP(Co-Learning Adventure Place)」。CLAPとは「拍手」という意味ですね。

社内外のコンテンツを従業員がそれぞれの関心・ニーズに合わせて利用できる独自のe-Learningシステムです。
今までと何が違うねん、と言ったら「学ばせる」という強制ではなく「主体的に学ぶ」「みんなで学ぶ」といった終身成長と共創の考え方が根底にあるところ。
バンデューラも自律的な学習が自己効力感を高めるという理論を説きましたね。
これにより、同社は巨大グループ企業において、あまねく従業員のウェルビーイングと働きがいの向上、つまりワークエンゲージメントを高めているというわけです。
横のつながりをつくる「新卒学部2023」の試み
さらに、新入社員向けの施策として興味深いのが「新卒学部2023」というプロジェクト。
これは前回お話した古屋さんの理論に基づいたもので「多様な新入社員1人1人が成長実感を持てるように、学び合いを支援するコミュニティ」と位置づけています。
具体的には「キャリアアンカー」から自己分析、その後4つにわけられたゼミの中から自分の志向に合わせて選び、仲間とともに学びを深めるというカリキュラムになっています。
9ヶ月間を2クールに分け、学びと振り返りを繰り返し、検証しつつ定着を目指しています。新入社員が自主的に行うという点、指導者不在で責任者も6年目の若手という点がポイント。学習支援は専門企業にアウトソーシングしており責任者の負担がそれほど多くないのもいいのかもしれません。

自律的成長を信じる
Z世代の属性はこれまでになく不可解なものとして、社会を悩ませているような風潮ですが、果たしてそうなのでしょうか。
私は古屋さんの「会社が変わった」説に全面的に賛成します。
諦めているように見えるなら、それは会社と社会がそうさせているだけのことだと私は思います。意欲がないなんてとんでもない。彼らは傷つかないように自分を守っているに過ぎないのです。社会が守ってくれないと感じているから。
私たちキャリアコンサルタントは多角的なサポートが仕事ですが、根底になくてはならないのは「クライエントを信じる」こと。
どんな無気力に見える方でも、私たちの前に座ってくださったことが前に進むルートに乗ったのだと考える。それこそが最初の一歩だと思っています。